所有不動産記録証明制度とは?

一人暮らしをしていた母が亡くなったとき、
所有不動産を調べるために市役所で名寄帳を取得しました。
名寄帳(なよせちょう)とは、
市区町村が固定資産税の課税対象となる土地・家屋を、所有者(納税義務者)ごとに一覧表にまとめた帳簿です。
これで市内の所有不動産を把握できます。
「他に特に何もないはずだ」
親が亡くなったとき、多くの人はこう思うのではないでしょうか。
僕も、そう思っていました。
2026年から始まる「所有不動産記録証明制度」は、
その人が全国に持っている不動産を、
法務局が一括で検索して一覧にしてくれるという、
これまで存在しなかった画期的な制度です。
名寄帳と所有不動産記録証明制度の違い
| 項目 | 名寄帳 | 所有不動産記録証明制度 |
| 管轄 | 市町村長 | 法務局(全国) |
| わかる範囲 | その市町村の課税不動産のみ | 全国に登記された不動産 |
| 非課税の土地、建物 | 出ない | 出る(登記されていれば) |
| 未登記の土地、建物 | 出ない | 出ない |
| 相続調査の網羅性 | 低い | 高い |
名寄帳の限界
名寄帳は便利ですが、あくまで「市町村の課税情報」なので、
- 市外の不動産
- 非課税の不動産
- 未登記の不動産
は拾えません。
だからこそ、
「親がどこに不動産を持っていたか分からない」問題が解決できなかった わけです。
便利さは、正直すごい

所有不動産記録証明制度の何が便利かというと、
「調べ方の出発点がはっきりした」ことだと思います。
これまでは、
- 実家の権利証を探す
- 固定資産税の通知を確認する
- 心当たりの市町村で名寄帳を取る
と、どうしても手探りになりがちでした。
それがこの制度では、
「この人名義で、登記上どんな不動産があるか」
を、全国横断で確認できます。
もちろん完璧ではなく、古い登記や表記揺れは抜けることもあるでしょう。
それでも、「どこから調べ始めればいいかわからない」状態を、一段階先に進めてくれます。
この「一段階前に進む」感覚が、実務ではとても大きいと思います。
申請できる人(請求権者)

所有不動産記録証明制度は、誰でも勝手に他人の不動産を検索できる制度ではありません。
個人情報の塊なので、請求できる人は法律で厳しく限定されています。
■ 不動産の登記名義人本人
- 自分の不動産を整理したい
- 終活で資産を把握したい
- 名義変更漏れがないか確認したい
こうした目的で本人が請求できます。
■ 登記名義人の相続人
- 親の不動産を把握したい
- 相続登記義務化に対応したい
- 名寄帳だけでは不安
相続人が最も利用するケースです。
■ 一般承継人(法人など)
- 合併で会社を引き継いだ
- 法人の資産を整理したい
法人も対象です。
■ 代理人
- 弁護士
- 司法書士
- 親族
- 成年後見人
委任状があれば代理で請求できます。
申請方法
申請方法は 窓口・郵送・オンライン の3種類。
どれも全国どこの法務局でも可能です。
同時に出てくる違和感

所有不動産記録証明制度は、
- 全国の不動産を
- 人単位で
- 法務局が一括検索してくれる
という、これまでにない便利な仕組みです。
でも、便利さの裏側には、どうしても拭えない“違和感”があります。
■ 知らなかった不動産まで見えてしまう
これは制度の本質でもあるのですが、同時に一番の違和感です。
「え、こんな土地持ってたの?」
「親が昔買った原野が出てきた…」
「私道の持分だけ残ってる…」
こういう“忘れられた不動産”が、容赦なく一覧に出てきます。
名寄帳では見つからなかったものまで、全部。
便利だけど、ちょっと怖い。
■ 見つかった瞬間に“義務”が発生する
2024年から相続登記は義務化されました。
- 相続を知った日から3年以内に登記
- 放置すると過料の可能性
- 価値がない土地でも義務は義務
つまり、
「知らなかった不動産が見つかった瞬間に、やるべきことが増える」
これが違和感の正体です。
■ 「調べたほうがいいのか?」という迷いが生まれる
制度の目的は素晴らしいのに、
実際にはこんな迷いが出てきます。
- 調べたら面倒な土地が見つかるかもしれない
- でも調べないと不安
- でも調べたら義務が発生する
- でも放置すると後で困る
この“ジレンマ”が、制度の違和感を生んでいる。
■ そもそも、誰がどこまで責任を負うのか
親が昔買った土地を、
子どもが全国検索して把握しなければならないのか。
- 親が忘れていた
- 固定資産税が非課税で通知も来ない
- 名寄帳にも出てこない
- でも登記は残っている
こういう土地を、
「相続人が探し当てて処理する」
という構造そのものに違和感がある。
まとめ

所有不動産記録証明制度は、相続であとでもめないための“安心材料”として使う価値があります。
ただし、すべての家庭が使う必要はありません。
親の不動産が把握できていない家庭や、転勤族・投資目的の土地購入など、全国に不動産が散らばっている可能性がある家庭にとっては、とても心強い制度です。
気になる人は、一度使ってみる価値があります。
■ 名寄帳に出てこない土地がありそうな家庭
名寄帳は市内の課税不動産しか分かりません。
だから、
- 非課税の山林
- 私道の持分
- 原野
- 課税標準が低い土地
こうしたものは名寄帳に出てこない。
「市役所で名寄帳を取ったけど、なんとなく不安」という家庭は、制度の恩恵が大きいです。
■ 相続人が多く、情報がバラバラな家庭
兄弟が多いと、
- 誰が何を知っているのか
- どの土地がどこにあるのか
- 誰が管理していたのか
が分からなくなりがち。
こういう家庭では、
「全国の不動産を一括で見える化する」
という制度の価値が非常に大きいです。
■ 親が「昔どこかに土地を買った」と言っていた家庭
よくあるのがこのパターン。
- 親が生前に言っていた
- でも場所が分からない
- 書類も残っていない
- 固定資産税の通知も来ていない
こういう土地は、登記だけ残っていることがあります。
■ 親が事業をしていた家庭
個人事業主や中小企業の経営者は、
- 倉庫
- 駐車場
- 事務所
- 工場跡地
- 共同名義の土地
など、家族が把握していない不動産が残っていることがあります。
■ 親が投資目的で土地を買っていた家庭
バブル期や高度成長期に、
- 別荘地
- 原野商法の土地
- 企業の保養地
- 分譲地の一部
を買っていたケースは珍しくありません。
家族が知らないまま放置されていることも多い。
■ 親が転勤族だった家庭
全国を転々としていた場合、
- 社宅の持分
- 住宅取得の名残
- 昔の分譲地の一画
など、家族が知らない不動産が残っていることがあります。
こういう場合は、全国検索が役に立ちます。


